獣を生きて捕まえるというのは
大変なリスクが伴います、獣たちは生き延びよう、逃げようと必死なので
全力で暴れます、大きな鹿だと、蹴られると骨などは折られると思います
猪ににはとても鋭利な牙を持っており、普段はイノシシ同士の縄張り争いや、オス同士の争いに使われる
おそろしい「武器」でその牙で切られるという事例は多々あります
他にも様々な危険はありますが
そういった危険を承知した上でも生捕をするメリットが僕はあると思っています
その1
「獣を落ち着かせる」
今やお魚を使われる料理人さんなどの間では有名な話なのかもしれませんが
お魚には生け越しという手法を使われる方がおられます
網や釣りで獲られたお魚は生きるために逃げようと必死に暴れて捕獲されますが
その時魚の活動に体内で使われるATP(アデノシン三リン酸)という物質が
のちに食べる時、旨味であるイノシン酸の元となる物質なのです
生け越しではこの捕獲するときに暴れることでATPを消費してしまったお魚を
一度安静な場所で数時間落ち着かせ、休ませることでもう一度ATP を復活させるという手法です
ですがこれは魚だけに限った話ではなくATP は「生体のエネルギー通過」と揶揄されることがあるほど
ほとんどの生き物が使っているエネルギー源なので
もちろん獣にも同じことが言えると思われます
![](https://nomigibier.com/web/wp-content/uploads/2022/02/nomiflowimg_0006-683x1024.jpg)
獣は日暮れから、朝方に罠にかかりますが僕達が罠の見回りに行けるのは朝明るくなってからです
それまで数時間暴れ回ります
その後捕獲される時にもさらに暴れます、僕達が事を終えた後には息も絶えだえで
個体によっては非常に疲弊しています
それをその場で止め刺し、放血してしまうか
それとも数時間、竹林や木陰のある場所、時にはクーラーをかけた部屋に入れて
水を飲ませたり、体を冷やしてやったりした後
落ち着かせ、止め刺し、放血するかでは随分変わってきます
ATPの話もそうですし、血流のめぐりかた、体温の上昇など
ポイントはいくつもありますが
命をいただく以上、こちらも命をかけて美味しくしたいなと
思うばかりです